毒婦、修羅の過去

毒婦の過去。

結婚生活スタート、出産

婚姻届も無事に受理され、結婚生活が始まった。

 

妊娠を知った時期も相当な週数だったために

 

「あぁ、それで気持ち悪かったのかー」

「だからこんなにケツでかくなったのかー」

「にしても食うもんうめぇなぁ!」

 

と、妊婦特有の頭がお花畑状態。

恥ずかしげもなく、苗字が突然変わりマタニティ服などを着て出勤するのも平気なほど。

頭は完全にベルサイユの薔薇並みに花でいっぱいだった。

なんなら小鳥も飛んでいた。

 

夫の激務は変わりなく。

私が寝ている間に出勤し。

夕方帰宅、という生活を送っていた。

 

そしてだんだんと「仕事が忙しくなってきた」と言い、そのまま会社に泊まる日があった。

 

徐々に、徐々に、その回数は増え。

 

一週間のうち帰ってくる日の方が少なくなってきた。

 

怪しんだ私は何度も夫を問い詰めたが、

 

「これから子供が産まれたらお金がかかるから、頑張ってんねん!」

 

と言われ。

頑張ってくれているんだなぁ、なんて思っていた。

 

臨月を迎える頃はさすがに、帰宅する日も多くはなったが、夕方から夜にかけての数時間。

一緒に夕飯を食べたらすぐ出勤、という毎日だった。

 

こんなんで夜中産気づいたらどうしてくれんの?とイライラしながらも。

 

お腹の子にストレスを与えてはならぬと、産休に入ってからはのんびり過ごすようにした。

 

まぁ、いなかったらいないで自由にのんびりでにるしーなんて思っていた。

 

 

夏の暑い日の朝。

その日は妙に身体が怠く、起き上がるのも辛かった。

そのまま横になっていたら、なんだかケツのあたりがツーン!てしはじめて。

 

なんだなんだ?

と、思いながら横になっていた。

 

ケツのツーンが辛くなってきて、トイレに行ったら出血していてビビって病院に電話。

 

子宮頚がんの手術をして、子宮の入り口が人より緩いという事だったので、助産師さんの指示通り病院に向かった。

 

したら、子宮口が5cm開いているとのことで即入院を言い渡され、夫にすぐ電話。

 

「入院セットがベットのところに置いてあるからすぐにそれ持って病院に来て!」

 

2時間経てど、3時間経てど夫は来ない。

 

迫り狂う陣痛。

 

夫への怒り。

 

 

やっと来た夫にとりあえずグーパン。

 

それから数時間、ようやく長女誕生。

 

 

誕生とともに、夫は仕事に戻らなきゃならない、と消えて行った。

 

 

産まれてきた赤ちゃんは、誰に教えてもらったわけでもないのに、必死におっぱいを探して乳首を吸う。

 

本来こんな時、女性は母親になった事を嬉しく思い涙するのだろう。

 

私はこれからの不安と、正直

「な、なんて事をしてしまったんだ!!」という複雑な思いで、まだ名もない赤ちゃんが必死に乳首を吸う姿を見て涙した。

 

姿を消した夫を助産師さんが探していた。

「夫なら仕事に戻りましたよ」と言う私の涙を助産師さんは優しく拭ってくれ。

忘れもしない、こう言ってくれた。

 

この子はあなたの一生の味方よ。

そして、あなたがこの子の1番の味方よ。

おめでとう、お疲れ様でした。

 

 

私は声を上げて泣いた。