毒婦、修羅の過去

毒婦の過去。

さ、地獄のはじまりだよ。

産後の入院生活。

 

個室がいっぱいで入れず。

4人部屋に入った。

2時間おき、いや、1時間?

さっき授乳したのにまた泣き出す娘。

 

おむつ?暑いのかな?具合が悪いのかな?

何度も熱を測ってみたり、何度も授乳させたり。

乳首が切れて傷になり、乳首を含ませるたびに飛び上がるほどの激痛。

母乳の出がいまいちで、お腹いっぱいになる前に吸い疲れて眠る娘。

お腹が空いてすぐ起きて、泣き出すを1日中繰り返す。

 

夜も殆ど眠れない。

 

よその子は、よく眠っている。

よそのお母さんは母乳がいっぱい出ていたり。

 

面会時間ともなれば、他のみんなはご主人がカメラやビデオ片手に面会時間めいっぱい一緒に過ごしていたり。

親戚、友達が多く訪ねる中。

 

私を訪ねる者などいなかった。

 

夫ですら、仕事が忙しいからと入院中来てくれる事は殆どなかった。

 

泣きながら「私一人ぼっちで寂しい」と泣いても。

忙しいからと宥められ。

 

私が泣けば、娘も泣き。

入院中はずっと娘と一緒に泣いていた。

 

事情が事情なだけに、誰にも言えず。

 

誰にも祝ってもらえない娘が不憫で仕方なく。

ずっと、ごめんね、お腹いっぱいにもしてやれない、と泣いた。

 

いつ泣き出すかわからないと、私は娘の寝顔を見ながら、ベットのふちに座り。

時々カーテンの隙間から見える外をぼんやり眺めていた。

 

泣いてばかりいた。

 

早く家に帰りたい。

だけど1人で赤ちゃんのお世話できるんだろうかと不安で不安で。

 

本来入院は5日だったのを7日に延ばしてもらった。

 

当時の助産師さんには感謝しかない。

あの時、助産師さんが「いつでも電話しておいでな」て言ってくれた言葉だけが、

私の大きな支えだった。

 

退院する日、娘に買っておいた白いドレスを着せて。

 

私と娘だけでタクシーに乗って自宅へ戻った。

 

 

静かな自宅。

新しい壁紙の匂い。

 

私が入院中、一度もこの家に夫は帰って来ていない事はすぐにわかった。

 

あの日のままの布団、あの日のままの台所。

 

腕の中でスヤスヤ眠る娘の顔を見ていたら涙が止まらなかった。