ゼロスタートという名の
私はもう、何が正しくて、何が不正解なのもわからなかった。
2つの選択肢の中から
いや、もっと数ある選択肢の中から
一番正しいものを選ぶ目を持て
こんな状況の中、数ある選択肢の中から一番正しいものを選ぶなど。
私には自信などなかった。
だから投げ出した。
3年間逃げ回った夫のように。
私もこの件から逃げたい。
そう思った。
家庭裁判所で調停をした事がある人ならよくわかり、ご存知かと思いますが。
調停委員という人達は、大人である私達の事よりも何よりも優先するものがあります。
「子の福祉」
です。
いかに子供にとって一番良いか、ここに焦点を絞る場面が多々あります。
どんなに夫婦や親が、男女が、いろんな立場で物を申しても「子供」にとっていいのは何か?を考えます。
私が不貞行為をしたのかしなかったのかじゃないんです。
これからの、先妻との間の子、そして私との子がいかにこれから幸せに暮らしていけるかなのです。
先妻は調停2回目に「夫とはこのまま離婚でいい、もうあの人と一緒にいるつもりはない」そう言いました。
夫は、私と娘と3人でゼロからやり直したい。
そして私は
「みんなの勝手にすればいいよ。私は後妻、死ぬまで後妻。私に選ぶ権利などない。娘が父親と暮らしたいと言えばそれでいい。どうでもいい、なんでもいい。私はみんなに合わせます。」
そう答えました。
裁判所では何度も子の福祉について話をされます。
自然と、誰の事よりも娘の1番の幸せを考えるようになります。
相手のお子さんの事も勿論。
自分の意思など
いとも簡単に踏み潰す事はできました。
夫はみんなと暮らしたいと言っている。
娘は「とーちゃん帰ってきた」と笑っている。
裁判所はあなたがお金を払えば、先妻も新しい生活をスタートさせる事ができると言っている。
長い長い取り調べの末、私は無実だ!と無実を訴え続けたが「もう誰を信用していいのかもわからない」「何を言っても信用してもらえない」こんな状況に陥った時
もうどうでもええわ…
はいはい、私がやりました…
と、やってもいないのに「やりました」と言ってしまう人の気持ちが痛いほどわかりました。
認めたくなくても、もう認めるしか道はない
そうとしか考えられなくなるんですよ
監禁された人は最初は逃げようとするが、もう私は逃げられないと悟った時、逃げる事を諦める、というのを聞いた事はありませんか?
似たようなものだと思います。
私は全てを諦めました。
夫の望む通り、3人でゼロからスタートする事にし。
不貞行為を認め。
慰謝料を私が払えば済むなら、払いますと。
夫はその時言いました。
俺を愛していないなら、必要としていないなら、俺は1人になるから。
勝手なものですよね。
犯罪者に選ぶ権利があるなんて。
3人で暮らすと言ってみたり。
1人になると言ってみたり。
逃げ場が、選択肢がある夫が。
逆にとても羨ましかった。
私は夫に言った。
これからは真面目に働いて、娘を大事にしてやってください。
1人になるなり、3人で暮らすなり、好きになさってください。
私に選択肢はありませんから。
私は後釜ですから。
先妻とそのお子さんを最優先し。
次に娘の事を考えてください。
私はそれに従うだけです。
そもそもが、そうなんですから。
妊娠した、と私が告げた時にあなたは言いましたよね?
産んで欲しい、結婚しようと。
それを信じた私が馬鹿でした。
あなたが望む「ここにいたい」を実現させたければ、勝手になさい。
1人になって独身謳歌して自由になりたければ、また逃げなさい。
責任など全てぶん投げてどこにでも飛んでしまいなさい、簡単な事でしょう?
これまでずっと好き勝手やってきたあなたのどこを信用しろと?
どう信用しろと?
過去は消えませんよ。
あなた、一生では背負いきれない十字架を背負って生きていきなさい、と言っても。
その十字架も簡単にその辺に投げ捨てられる人間でしょうから、いや、そういう人間です。
ここまで言われても、私と娘のそばでゼロからスタートしたいというならやってみればいい。
その代わり、俺の事を愛しているかなんてふざけた質問しないでくださいね。
これからあなたと一緒に暮らす魅力は。
毎月持ち帰ってくるあなたが稼いだお金と。
たまに必要な男の力のみです。
それと、娘の喜ぶ顔です。
今、あなたと別れても、私があなたを逆に法で裁いても。
あなたからは一円たりとも取れないのもわかっていますからね。
これから一生をかけて、毎月私に生活費と言う名の慰謝料を払い続けてください。
最低限のあなたの身の回りのお世話くらいはして差し上げますからね。
一度は愛した男ですから。
と、もう笑うしかありませんでした。
呆れた顔をする夫の顔を見て、思わず笑いました。
その顔が面白くて面白くて。
いっそお前の事をここで殺してやりたい、みたいな顔もしていましたよ。
犯罪者のくせに。
夫よ、私が鬼畜に見えるか?
鬼畜にしたのは、お前だ。